「リールをやったほうがいいとは聞くが、撮る人も映る人もいない」。中小企業のInstagram運用の相談で、ほぼ毎回出てくる言葉です。動画は手間がかかる、社員は顔を出したがらない、撮っても編集できない。結果として、リールは「うちには無理」と最初から外されがちです。
この記事では、撮影しなくても作れる「B-roll+テロップ型」のリールを中心に、企業がリールを続けるための作り方と分担をまとめました。建設・製造・飲食の支援先で、投稿代行と内製化支援の両方をやってきた経験をもとに書いています。
この記事の要点
- リールはフォロワー以外に届く唯一の枠。企業が使う理由はここにあり、「映える動画」を作ることではない
- 撮れなくても作れる。ストック動画や手元の写真(B-roll)に、テロップを主役にして重ねる型なら、台本を書けば月4本は回る
- 続ける鍵は分担。社内に残すのは「ネタと素材」、台本と編集は型にして外に出してもいい。見る数字は再生数ではなく保存とプロフィール遷移
THIS ARTICLE
企業のリールは、この5ステップで「撮らなくても」回り始める
1. 目的と相手を決める
受注・来店・採用のどれか1つ。見せたい相手を1行で書く
2. ネタを型に当てる
比較・手順・断られた話。3つの型にネタを流し込む
3. テロップを先に書く
1カット15字以内×8カット。最初の1秒に結論を置く
4. 素材を集める
ストック動画・既存写真・現場のスマホ動画。撮れる範囲でよい
5. 編集して数字を見る
安全域にテロップを焼き込み、保存とプロフィール遷移を月1回見る
企業がInstagramリールを使う理由:フォロワーの外に届く唯一の枠
リールを「若い人向けの流行」と捉えている経営者は、まだ多いと感じます。ただ、企業のアカウントにとってのリールの価値は、流行とは別のところにあります。
フィード投稿とリールの違い:届く相手が違う
写真のフィード投稿は、基本的にフォロワーのタイムラインに表示されます。フォロワーが300人の会社なら、どれだけ良い投稿をしても、最初に見るのはその300人の一部です。会社のアカウントのフォロワーが増えにくい理由の一つが、ここにあります。
リールは、フォローしていない人の画面にも表示されます。興味や行動が近い人に順に見せ、反応がよければさらに広げる仕組みです。会社を知らない人に最初に届く枠は、Instagramの中ではリールと発見タブくらいしかありません。企業がリールを使う理由は、この一点に尽きます。
「うちの業種には合わない」は、ほぼ思い込み
当社が支援しているのは、建設会社、特殊塗装の製造業、手打ちそばの店、美容サロンなど、いわゆる「映える」とは縁の薄い業種が中心です。それでもリールは機能しています。理由は単純で、同じ業種の会社がリールをほとんど出していないからです。
見る側も、派手な映像を求めているわけではありません。「この会社は何をしているのか」「頼むと何が起きるのか」が30秒で分かれば十分です。地味な業種ほど、競合が少なく、淡々とした説明の動画が目立ちます。
代表の所感:続かない原因は「撮る」ことにある
マーケター歴27年、投稿代行と内製化支援の両方をやってきて、リールが続かない会社に共通しているのは「撮影の段取りで止まる」ことです。撮る日を決める、映る人を決める、カメラを用意する。この準備が重く、最初の2〜3本で息切れします。
逆に続いている会社は、撮影を前提にしていません。手元にある写真、ストックの動画、現場でたまたま撮れたスマホ動画を素材にして、テロップで意味を付けています。この記事で勧めるのは、その作り方です。
撮らなくても作れる「B-roll+テロップ型」とは
B-rollは、もともと映像制作の言葉で、インタビューなどの主映像(A-roll)に差し込む補助映像のことです。ここでは「それ自体に台詞がなく、テロップの背景として使える映像や写真」と考えてください。
B-rollになるもの:ストック動画、既存の写真、画面収録
一つ目はストック動画です。Adobe StockやPIXTAには、工場のライン、打ち合わせ、調理、現場作業など、業種を問わず使える短い動画があります。定額プランなら1本あたりの費用は小さく、撮影の手配より安く早いことがほとんどです。
二つ目は、会社にすでにある写真です。施工前後の写真、製品写真、店の写真。静止画を2〜3秒ずつつなぎ、ゆっくり拡大する動きを付けるだけで、動画として成立します。三つ目は画面収録で、見積もりの流れや予約画面を説明するときに使えます。
型の基本形:8カット×約3秒、テロップが主役、音はBGMだけ
当社が支援先で使っている基本形は、8カット、1カット約2.5〜3秒、全体で20秒強です。各カットにテロップを1つ置き、テロップを読み終える速さでカットを切り替えます。ナレーションは入れず、音はBGMだけにします。
この型の利点は、映像の質に依存しないことです。主役はテロップで、映像は雰囲気を作る背景です。だからストック素材でも成立し、台本さえ書ければ誰が作っても一定の仕上がりになります。属人化しないことが、企業の運用では何より大切です。
支援先の例:B2Bの製造業で、ストック素材とテロップだけで始めた
特殊な塗装を手がける製造業の支援先では、工場での撮影が難しく、社員が映ることも望まれませんでした。そこで、テーマ案を10本出し、「他社に断られた案件3選」「2つの工法の違い」「依頼の手順5ステップ」の3本を選んで、各8カット・約21秒の絵コンテにしました。
素材はすべてストックの動画と写真、音はBGMだけです。狙いはフォロワー数ではなく、取引先候補の担当者に「こういう加工を頼める会社がある」と知ってもらうこと。B2Bでも、リールは「知らない人に最初に届く枠」として機能します。
作り方の5ステップ:企画→台本→素材→編集→投稿
作業の順番を間違えると、時間がかかるわりに伝わらない動画になります。素材を集めてから何を言うか考えるのではなく、言うことを決めてから素材を探してください。
企画:目的を1つに絞り、ネタは「比較・手順・断られた話」の3型に当てる
最初に、リールの目的を受注・来店・採用のどれか1つに決めます。全部を狙うと、誰に向けた動画か分からなくなります。次に、見せたい相手を「県内の元請けの工事担当者」「近隣に住む40代の家族」のように1行で書きます。
ネタは3つの型に当てはめると出しやすくなります。「比較」は2つの工法や素材の違い、「手順」は依頼から納品までの流れ、「断られた話」は他社でできなかった案件をどう解決したか。この3型で、ほとんどの業種は月4本分のネタが出ます。
台本:テロップを先に書く。1カット15字以内、最初の1秒に結論
台本は、8行のテロップそのものです。1行15字以内、漢字とひらがなの割合を意識し、読み上げなくても意味が取れる書き方にします。スマホで見る人の多くは音を出さないので、テロップだけで完結させる必要があります。
1カット目に結論か問いを置きます。「他社に断られた塗装、できます」「見積もりまで3日の理由」のように、最初の1秒で「自分に関係がある」と思わせる一文です。最後のカットは、次の行動を1つだけ書きます。「プロフィールのリンクから」「来店時にこの画面を」で十分です。
素材と編集:縦型、安全域、テロップは焼き込む
素材は縦型(9:16)で探します。横の素材しかないときは、中央を切り出すか、上下に余白を取って背景色を敷きます。編集はCapCutのような無料アプリでも、動画編集ソフトでも構いません。大切なのは道具より、テロップの置き場所です。
リールの画面は、上部にアカウント名などの表示、下部にキャプションやボタンが重なります。テロップはその範囲を避け、画面の中央寄りに置きます。当社ではテロップを動画に焼き込んだMP4で書き出し、アプリ側の文字機能に頼りません。別の媒体に転用でき、見た目も安定するからです。
現場を撮れるなら「実写+テロップ型」はもっと強い
B-roll型は「撮れない会社」のための型ですが、現場があり、スマホで数秒でも撮れるなら、実写にテロップを重ねる型のほうが反応は良くなります。撮影の負担を増やさずに実写を取り入れる方法を紹介します。
スマホで十分。撮るのは「人・手元・変化」の3つ
機材はスマホで足ります。撮るものは3つに絞ります。働いている人の表情、作業している手元、施工や調理の前後の変化。この3つは、ストック素材では絶対に手に入らない「その会社だけの映像」です。
撮り方のルールも3つだけにします。縦で撮る、1カット10秒以上回す、ズームしない。これを現場の社員に伝え、作業の合間に撮ってもらうだけで、月に数本分の素材は集まります。きれいに撮ろうとしないことが、続けるコツです。
支援先の例:建設会社の現場動画に、テロップを焼き込んだだけで変わった
地方の建設会社の支援先では、目的を「県内の元請けからの受注」に置き、現場の雰囲気を伝えることにしました。素材は、本工事で余った材料を使って行ったサービス工事の様子と、雨の中で楽しそうに作業する外国人社員の姿を、社員がスマホで撮った数十秒の動画です。
当社がやったのは、その動画に「何をしているのか」「なぜそうするのか」のテロップを焼き込んで20秒前後にまとめることだけです。社長からは仕上がりに高い評価をもらい、以後、現場の動画が定期的に届くようになりました。撮る側が「これで使えるのか」と分かると、素材は自然に増えます。
飲食店の例:季節限定メニューを、スマホ動画と縦書きテロップで
手打ちそばの店では、季節限定のメニューが出るたびに、店主がスマホで撮った調理と盛り付けの動画を素材にしています。当社は、店の雰囲気に合わせた縦書きのテロップを重ね、カバー画像とキャプションまで一式にして返す形です。
飲食店は「新メニュー」「仕込み」「季節の素材」とネタが尽きません。テロップの書体や色を店ごとに固定しておくと、何本並んでも同じ店の投稿だと分かり、プロフィールに統一感が出ます。型を決めるとは、こういう細部を先に決めておくことです。
続けるための分担:会社が出すもの、外に任せてよいもの
作り方が分かっても、続かなければ意味がありません。続けるために必要なのは根性ではなく、誰が何を出すかの分担です。外注する場合も内製する場合も、考え方は同じです。
社内に残すのは「ネタと素材」。台本と編集は型にして外に出せる
会社にしか出せないものは、ネタと素材です。今月どんな案件があったか、現場で何が起きたか、お客様に何と言われたか。これは外の人間には分かりません。逆に、台本を書く、素材を探す、編集する、投稿するは、型が決まっていれば外に出せます。
当社の投稿代行では、月1回の打ち合わせでネタを聞き取り、現場の写真や動画を共有フォルダに入れてもらうだけにしています。会社側の作業は月に1時間程度です。内製化を支援する場合も、この型と分担をそのまま社内の担当者に渡します。
月4本を回す段取り:ネタ出し30分、撮影は現場のついで、編集は1本1時間
目安は週1本、月4本です。月初に30分でネタを4つ決め、3型に当てはめて台本を書きます。撮影は専用の日を作らず、現場や店の営業のついでに「人・手元・変化」を撮ってもらいます。編集は型が決まっていれば、1本1時間以内に収まります。
毎日投稿する必要はありません。企業アカウントで大切なのは、頻度より「止まらないこと」です。止まったアカウントは、見た人に「この会社は今も営業しているのか」という不安を与えます。週1本を1年続けるほうが、毎日投稿して3か月で止まるより、はるかに効きます。
やらないほうがいいこと:流行の音源に乗るだけ、顔出しの強要、キャプションの詰め込み
流行の音源やダンスに乗った動画は、一時的に再生数が伸びても、会社の仕事とは結びつきません。見た人の記憶に残るのは音源であって、会社ではないからです。また、ビジネスアカウントでは使える音源に制限があるため、音は商用利用できるBGMに絞るのが安全です。
社員への顔出しの強要も避けてください。嫌がる人を映した動画は見る側にも伝わるので、手元や後ろ姿で十分です。キャプションは、テロップで言い切れなかった補足と、行動の案内だけにします。ハッシュタグは5つ程度に絞り、会社名と地域名を固定で入れておきます。
リールの数字の見方と、問い合わせにつなげる受け皿
リールを出し始めると、どうしても再生数が気になります。ただ、企業のリールで再生数を追うと、判断を誤ります。見るべき数字と、受け皿の整え方を押さえておいてください。
見る数字は再生数ではなく「保存・プロフィール遷移・フォロー」
再生数は、見せたい相手以外にどれだけ広がったかも含んだ数字です。1万回再生されても、問い合わせにつながるのは「保存した人」「プロフィールを見に来た人」「フォローした人」です。インサイトでこの3つを月1回見て、どの型のリールが数字を動かしたかを確かめます。
保存が多いのは「手順」型、プロフィール遷移が多いのは「断られた話」型、という傾向が出てきたら、翌月はその型を増やします。数字の見方が決まると、次に作る動画も決まります。再生数だけを見ていると、この判断ができません。
受け皿:プロフィール、固定リール、ハイライト、リンク先
リールを見てプロフィールに来た人が、最初に見るのはプロフィール文と、上部に固定した投稿です。プロフィール文には「何をしている会社か」「どこの地域か」「何ができるか」を3行で書き、一番伝わったリールを固定します。ハイライトには「依頼の流れ」「施工例」「よくある質問」を並べます。
プロフィールのリンク先は、トップページではなく、リールの内容に対応したページにします。「依頼の手順」のリールを見た人なら、問い合わせの流れが書かれたページです。このあたりの設計は「中小企業のInstagram運用」の記事で詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
当社の関わり方:型を作って渡すか、代行で回すか
当社では、リールの企画と型(目的、ネタの3型、台本の書き方、テロップの書体と色、安全域、投稿の段取り)を作って社内に渡す内製化支援と、ネタと素材だけいただいて当社が作って投稿する代行の、どちらにも対応しています。どちらが向くかは、社内に月数時間を割ける人がいるかで決まります。
どちらの場合も、最初にやるのは「撮らなくても作れる1本」を実際に作ってみることです。1本できると、社内の見え方が変わり、素材が集まり始めます。この記事の型で1本作ってみて、うまく行かない箇所があれば、そこから一緒に考えます。
よくある質問
企業のリールは何秒くらいが適切ですか?
当社の基本形は8カット・20秒前後です。テロップを読み終える速さでカットを切り替えると、1カット2.5〜3秒になり、合計で20秒強に収まります。手順や比較の内容が多いときは30〜40秒まで伸ばしても構いませんが、最初の1秒に結論か問いを置くことのほうが、長さより大切です。長くするほど最後まで見られる割合は下がるので、伝えたいことが多ければ2本に分けてください。
社員の顔出しや、社長の出演は必要ですか?
必須ではありません。手元、後ろ姿、現場や製品の変化だけでも、その会社だけの映像になります。嫌がる人を映した動画は見る側にも伝わるので、顔出しは本人が乗り気な場合に限ってください。社長が話す動画は信頼感が出やすい一方で、撮影の段取りが重くなり続かない原因にもなります。まずは顔を出さないB-roll+テロップ型で型を作り、素材が集まるようになってから、出演型を足すのが現実的です。
ストック素材を使ったリールでは、「自社らしさ」が出ないのではありませんか?
自社らしさは映像ではなく、テロップの中身で出ます。「他社に断られた案件をどう解決したか」「依頼から納品までに何日かかるか」は、その会社にしか書けません。ストック素材はあくまで背景で、主役はテロップです。加えて、テロップの書体と色、冒頭と末尾の決まり文句を固定しておくと、素材が違っても同じ会社の投稿だと分かります。現場のスマホ動画が1本でも手に入ったら、それを差し込むと一気に「自社の動画」になります。
BGMや流行の音源は使ったほうがいいですか?
流行の音源に乗る必要はありません。企業のリールは、音を出さずに見られる前提でテロップだけで完結させるのが基本で、音は雰囲気を作るBGMに留めます。ビジネスアカウントでは使える音源に制限があるため、商用利用できる音源やInstagramがビジネス向けに用意している音源から選ぶのが安全です。流行の音源で一時的に再生数が伸びても、見た人に残るのは音源であって会社ではないので、問い合わせにはつながりにくいと考えてください。
月に何本投稿すれば効果が出ますか?
目安は週1本、月4本です。企業アカウントでは、頻度より「止まらないこと」が大切で、止まったアカウントは見た人に営業しているのかという不安を与えます。月4本を3か月続けると、どの型のリールが保存やプロフィール遷移を動かすかの傾向が見えてきますので、そこから型の配分を調整します。毎日投稿は、素材もネタも尽きて止まる原因になるので勧めていません。月4本を1年続けることを目標にしてください。
「撮らなくても作れる1本」から、リールを始めませんか。
目的の整理、ネタの型、台本とテロップの設計、投稿を続ける分担まで、Practical Marketingが調べて、考えて、提案します。
初回相談は無料、着手金はありません。




