マーケティング担当の採用か外部か|中小企業の一人目を失敗させない判断基準

「マーケティングの担当者を一人採用したい」。売上が伸びて手が回らなくなった会社の経営者から、当社によくいただく相談です。求人を出す前に話を聞くと、多くの場合、その一人に「戦略も、制作も、SNSも、広告も、分析も」を期待しています。

この記事では、中小企業がマーケティング担当を採用するか、外部と組むかを決めるための判断基準を整理します。事業会社でマーケティング部門の責任者として人を採用し評価してきた側と、独立後に100社以上の支援先で担当者の隣に立ってきた側、両方の経験をもとに書いています。

この記事の要点

  • 「マーケティング担当」は一つの仕事ではなく、設計・制作・運用・分析という4つの違う仕事の束。一人目の採用が失敗する原因は、ほぼここにある
  • 選択肢は採用か外部かの2つではなく、正社員・副業のプロ人材・外部パートナーの3つ。仕事を分けてから、それぞれに合う形を選ぶ
  • 社内に残すべきは「顧客を知っていること」と「素材」。設計と判断は外部に頼めるが、評価する上司役がいないままの採用は避ける

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マーケティング担当の「採用か外部か」は、この5ステップで決まる

1. 仕事を4つに分ける

設計・制作・運用・分析。一人に全部を期待しない

2. 社内に残すものを決める

顧客を知っていること、素材、最終判断は社内に置く

3. 3つの形から選ぶ

正社員・副業のプロ人材・外部パートナーを仕事ごとに当てる

4. 任せ方と評価を決める

最初の1年の仕事を1つに絞り、施策の数字で評価する

5. 半年ごとに組み替える

内製と外部の比率は固定しない。数字を見て見直す

目次

「マーケティング担当を採用したい」の相談で、まず聞いていること

採用の相談を受けたとき、当社が最初に聞くのは「その人に、最初の3か月で何をしてほしいですか」です。ここで答えが「全体的に」になる会社は、採用しても外部に頼んでも、うまく行きません。

一人目のマーケティング担当は、4つの違う仕事を一人で背負う

マーケティングの仕事は、少なくとも4つに分かれます。誰に何を売るかを決める「設計」、ホームページや動画や資料を作る「制作」、SNSや広告や展示会を日々回す「運用」、数字を見て次を決める「分析」です。大きな会社では、それぞれ別の人か別の会社が担当しています。

中小企業の一人目は、この4つを一人で背負います。設計ができる人は制作が遅く、制作が得意な人は分析に興味がない。これは能力の問題ではなく、職種が違うからです。求人票に4つ全部を書いた時点で、合う人はほとんど市場にいません。

採用した後に起きること:評価できない、孤立する、辞める

採用後によく起きるのは、三つです。一つ目は、経営者が担当者の仕事を評価できないことで、投稿が増えたのは分かるが、それが良い仕事なのか判断できず、売上だけで見てしまいます。二つ目は孤立です。社内に相談相手がいないため、担当者は一人で正解を探し続けます。

三つ目は、その結果としての離職です。1年かけて育てた担当者が辞め、管理画面のパスワードと途中まで作った資料だけが残る。支援先で、この状態から相談が始まることは珍しくありません。採用の失敗は、採用そのものではなく、採用の後の設計がないことから起きています。

事業会社で採用する側だった頃に見ていたこと

代表はマーケター歴27年のうち長い期間を、事業会社でブランドマネージャーとして、部下と外部の代理店の両方を使う立場で過ごしました。大きな会社でも、一人のマーケターが力を出せるのは、仕事の範囲が決まっていて、上司が成果を見られるときだけです。

範囲が決まっていない担当者は、頼まれたことを全部やろうとして、どれも中途半端になります。これは本人の意欲とは関係ありません。中小企業で一人目を採用するなら、大企業以上に「範囲を決める」ことが先です。範囲を決めるには、まず仕事を分ける必要があります。

採用か外部かを決める前に、仕事を4つに分ける

採用か外部かは、会社全体で一度に決める問いではありません。仕事ごとに決める問いです。そのために、まず御社のマーケティングの仕事を4つの箱に分けてみてください。

設計・制作・運用・分析。それぞれに必要な人は違う

設計は、誰に・何を・どう届けるかを決める仕事で、経験と判断力が要ります。制作は、ホームページ・動画・チラシ・資料を作る仕事で、技術と量が要ります。運用は、SNS投稿・広告・メール・展示会を毎週回す仕事で、継続力が要ります。分析は、数字を読んで次を決める仕事で、設計と対になります。

箱に分けると、御社に今いちばん足りないのがどれかが見えます。多くの中小企業で足りないのは、実は「運用」の手ではなく「設計」です。設計がないまま運用の手を増やすと、投稿も広告も増えるのに、問い合わせが増えない状態になります。

社内に残すべきは「顧客を知っていること」と「素材」

4つの箱のどれを外に出すにしても、社内に必ず残すものが二つあります。一つは、顧客を知っていることです。どんな人が、なぜ御社を選び、何に困っているか。これは営業や現場が持っている情報で、外部はこれを聞き出すことはできても、持つことはできません。

もう一つは、素材です。現場の写真、お客様の言葉、商品の背景にある話。SNS運用を外部に任せている支援先でも、この二つだけは社内の役割にしています。逆に言えば、この二つを出せる会社は、制作も運用も外に出して困りません。

外に出しやすいのは「量」と「専門技術」。出しにくいのは「最終判断」

外部に出しやすい仕事は、量が多いもの(投稿・バナー・記事)と、専門技術が要るもの(広告の設定、動画編集、サイト構築)です。これらは社内で育てるより、すでにできる人に頼むほうが早く、安く済みます。

出しにくいのは、最終判断です。この価格で出すか、この顧客層をやめるか、今年は広告に投資するか。これは経営の判断で、外部ができるのは材料を揃えて提案するところまでです。設計を外部に頼む場合も、判断は経営者が持つという前提で組んでください。

選択肢は2つではなく3つ:正社員・副業のプロ人材・外部パートナー

「採用か外部か」と聞かれますが、実際の選択肢は3つあります。正社員の採用、副業や業務委託で働くプロ人材、そして会社として組む外部パートナーです。中間の選択肢を知らないまま、2択で悩んでいる会社が多いと感じます。

正社員の採用が向く会社の条件

正社員が向くのは、運用の量が毎週安定してあり、社内に評価できる上司役がいて、その人が3年後も必要だと言い切れる会社です。たとえば店舗が複数あってSNSと販促を毎週回す会社、展示会と商談資料が年間を通じて途切れない製造業などです。

逆に、「まず何をすべきか分からない」段階の会社に正社員は向きません。設計がない状態で採用された担当者は、設計から一人で始めることになり、ここで孤立します。設計は先に外部と作り、運用が見えてから採用する順番のほうが、本人も会社も楽です。

副業・業務委託のプロ人材という中間の選択肢

ここ数年で大きく変わったのは、大企業でマーケティングをしている人が、副業や業務委託で中小企業の仕事を受けるようになったことです。マッチングサービスを通じて、月に数日、特定の仕事だけを頼めます。当社への依頼も、この経路で来るものが少なくありません。

向いているのは、設計と分析のように、量は少ないが経験が要る仕事です。正社員一人分の人件費で、設計ができる人と制作ができる人を別々に頼むこともできます。注意点は、頼む側に「何を頼むか」が決まっていないと、相手も動けないことです。仕事を4つに分けておく意味は、ここにもあります。

外部パートナーに向く仕事と、向かない頼み方

コンサルティング会社、広告代理店、制作会社といった外部パートナーは、仕事の種類がはっきりしているときに力を出します。サイトを作る、広告を回す、戦略を作って実行まで伴走する。それぞれ得意な箱が違うので、「マーケティング全部」で頼むと、相手の得意な箱に寄った提案が返ってきます。

向かない頼み方は、社内に窓口がなく、素材も出ず、判断も相手に委ねる丸投げです。この形だと、どれだけ良い会社に頼んでも成果は出ません。外部に頼むときほど、社内に「顧客を知っていて、素材を出せて、判断できる人」が一人必要です。それは多くの場合、経営者本人です。

費用で比べる:人件費・外注費・そして「代表の時間」

費用の比較で見落とされがちなのは、正社員の本当のコストと、経営者自身の時間です。月額の外注費と月給だけを並べると、判断を誤ります。

正社員一人の本当のコスト:給与、採用、立ち上がり、離職

正社員のコストは、給与に社会保険や設備を足した額だけではありません。採用にかかる広告費と面接の時間、入社から戦力になるまでの数か月、そして辞めたときに積み上げたものが消える損失が乗ります。当社の目安では、1年目の実質コストは年収の1.5倍前後と見ておくと、現実に近くなります。

さらに、一人目のマーケティング担当は、上司役がいないと立ち上がりに時間がかかります。半年たっても成果が見えず、経営者が「この投資は正しかったか」と迷い始める。この迷いの期間が、実は一番高くついています。

外部は「高い」のではなく「見える」

外部の費用は月額や案件ごとに金額が決まっているので、高く見えます。しかし、見えているだけです。正社員の場合は同じ額が給与・社会保険・採用費・教育の時間に分散して見えにくくなっているだけで、総額では外部のほうが安いことも珍しくありません。

外部のもう一つの利点は、やめられることです。半年で成果が出なければ契約を終えられる。正社員ではそうは行きません。設計のように、最初の半年に集中して必要な仕事は、外部で始めて、社内に移す判断を後から行うほうが、失敗したときの損失が小さくなります。

一番高いのは、判断できない人が判断に使う時間

費用の中で最も高いのは、経営者の時間です。マーケティングの判断材料が揃わないまま、経営者が「この投稿でいいか」「この広告を続けるか」に毎週時間を使っている会社があります。これは経営者の仕事ではなく、設計と分析の仕事を誰も担っていないことの表れです。

採用でも外部でも、経営者の時間が「判断材料を見て決める」だけに減るなら、その投資は正しい方向です。逆に、経営者が担当者や外部の仕事を細かく見る時間が増えるなら、組み方が間違っています。費用の比較は、金額ではなく、経営者の時間がどう変わるかで見てください。

採用すると決めたら:求人票・評価・上司役の3つを先に用意する

仕事を分けた結果、正社員の採用が合うと判断した会社もあります。そのとき、求人を出す前に用意しておくものが3つあります。これがあるかどうかで、採用後の1年が変わります。

求人票に「全部」を書かない。最初の1年の仕事を1つに絞る

求人票には、最初の1年で担ってほしい箱を1つだけ書いてください。「SNSと販促物の運用を担当し、設計は外部のパートナーと一緒に行います」のように、範囲と支えを明記します。4つ全部を書いた求人票は、できる人には敬遠され、できない人には魅力的に見えます。

経験者が採れないなら、社内の人を担当にする選択もあります。顧客を知っていて、素材を出せる人は、運用の箱なら数か月で回せるようになります。その場合も、設計と分析を外部が支える形にしておくと、本人が孤立しません。

評価は「売上」ではなく「担当する施策の数字」で

担当者の評価を売上だけにすると、本人の努力と関係ない要因で評価が上下し、半年で疲弊します。評価は、担当する箱の数字にしてください。運用なら、問い合わせ数、プロフィールへの遷移、資料請求の数。制作なら、納期と、使われた回数です。

この数字を決めるのは、設計の仕事です。つまり、評価の数字を決められる人が社内にいない会社は、採用の前に設計を外部と作る必要があります。評価が決まっていない採用は、担当者にとっても会社にとっても、ゴールのない仕事になります。

上司役がいないなら、外部に「上司役」を頼む

一人目のマーケティング担当には、仕事を見て、良し悪しを言い、次を一緒に決める相手が要ります。経営者がその役を担えれば一番ですが、本業で手一杯なことがほとんどです。その場合は、外部のマーケターに月に数回、担当者の上司役として入ってもらう形があります。

当社の顧問契約でも、この形は多くあります。担当者が作ったものを一緒に見て、数字を読んで、次の月に何をするかを決め、経営者にはその結果だけを報告します。担当者は孤立せず、経営者は判断に集中でき、外部は設計と分析の箱を担う。一人目を活かすには、この三角形が要ります。

支援現場で見た、うまくいっている組み合わせ

最後に、支援先で実際にうまく回っている組み合わせを、代表の所感として3つ紹介します。いずれも、仕事を分けたうえで、社内と外部の役割をはっきりさせた会社です。

内製化支援:外部が型を作り、社内が回す

完全予約制の美容サロンの支援先は、最初から「外部に頼り続けず、自分たちで運用できる体制」を求めていました。当社が担ったのは、集客の設計、ホームページの制作、投稿の型とマニュアルづくり、そしてスタッフへの説明です。写真を撮れる若手スタッフが社内にいたことが、この形を可能にしました。

半年の契約期間を、設計→制作→運用の立ち上げ→社内への引き継ぎ、と区切って進めています。内製化とは、外部を使わないことではなく、外部が作った型を社内が回せるようになることです。型がないまま内製を始めると、担当者が毎回ゼロから考えることになります。

投稿代行:社内は「ネタと写真」だけ、外部が制作と運用

建設会社や特殊な塗装を手がける製造業の支援先では、逆の形です。社内に運用の担当者を置かず、現場の写真や動画と、「今月こんな仕事があった」という一言だけを当社に送ってもらい、企画・制作・投稿を当社が行います。社内の負担は、月に数回のやり取りだけです。

この形が成り立つのは、社内に「顧客を知っていること」と「素材」が残っているからです。どの現場の写真が元請けに響くか、どの仕事が自社の強みかは、社内の人が一番知っています。それを出せる会社は、担当者を採用しなくてもSNSを回せます。

当社が「宿題を出さない」委託型にしている理由

当社は、支援先に宿題を出さない形で支援を組んでいます。調べて、考えて、提案して、実行するところまでを当社が担い、支援先には月1回の打ち合わせで判断だけをしてもらう。これは、マーケティング担当がいない会社でも始められるようにするためです。

当社自身も、社員を抱えず、必要な技術は外部のプロと組む形で運営しています。設計と判断は代表が持ち、制作や専門技術はその仕事が得意な人に頼む。中小企業に勧めている組み方を、自社でも実践しているつもりです。

内製と外部の比率は、半年ごとに見直す

採用か外部かの答えは、一度決めたら終わりではありません。外部で始めた設計が固まれば、運用は社内に移せます。社内の担当者が育てば、外部は上司役だけに縮められます。逆に、担当者が辞めたら、しばらく外部に戻す判断もあります。

半年ごとに、4つの箱を誰が担っているか、担当する数字は動いているか、経営者の時間はどう変わったかを見直してください。御社のマーケティングの仕事をどう分け、誰に担わせるかを整理するところから、一緒に考えることもできます。採用を決める前に、お気軽にご相談ください。

よくある質問

マーケティング担当は、会社がどのくらいの規模になったら採用すべきですか?

売上や人数より、「毎週安定してある運用の仕事」が担当者一人分あるかで判断してください。店舗が複数あって販促とSNSを毎週回す、展示会と商談資料が年間を通じて途切れない、といった状態なら採用が合います。逆に、まず何をすべきか決まっていない段階では、設計を外部と先に作り、運用の量が見えてから採用する順番のほうが、本人も会社も失敗しにくくなります。

未経験の社員をマーケティング担当にするのは、ありですか?

ありです。顧客を知っていて、現場の素材を出せる人は、運用の仕事なら数か月で回せるようになります。条件は、設計と分析を外部が支えることと、担当する範囲を1つに絞ることです。未経験の人に「マーケティング全般」を任せると、設計から一人で始めることになり孤立します。外部が型を作り、本人がそれを回し、月に数回一緒に数字を見る形なら、社内の人のほうが経験者より定着しやすいこともあります。

副業・業務委託のプロ人材と、コンサルティング会社の違いは何ですか?

プロ人材は個人として特定の仕事を月に数日受ける形で、設計や分析のように量は少ないが経験が要る仕事に向いています。コンサルティング会社や代理店は、会社として戦略から実行までを担ったり、広告やサイト制作のように専門技術と量が要る仕事を引き受けたりします。どちらが良いかではなく、頼む仕事の箱で選んでください。いずれも、頼む側が「何を頼むか」を決めていないと動きにくい点は同じです。

外部に頼むと、社内にノウハウが残らないのではないですか?

残すべきものを決めておけば残ります。社内に残すべきは「顧客を知っていること」と「素材」、そして最終判断です。これらは外部に出せないものなので、外部に頼んでも社内に残ります。一方、広告の設定や動画編集のような専門技術は、社内に残そうとしても担当者が辞めれば消えます。ノウハウを残したいなら、型やマニュアルを納品物に含める契約にし、社内の人が月に数回一緒に見る時間を確保してください。

採用したマーケティング担当を、外部とどう組ませればいいですか?

担当者には運用か制作のどちらか1つの箱を持たせ、外部には設計と分析、そして担当者の上司役を頼む形が、当社の支援先ではうまく回っています。外部が月に数回、担当者が作ったものを一緒に見て、数字を読み、次の月の施策を決める。経営者にはその結果だけを報告します。担当者は孤立せず、経営者は判断に集中でき、外部は設計と分析を担う。この三角形ができると、一人目の担当者が活きます。

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